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サー・ロジャー・ムーアのボンドとキングスマンの意外な関係性

5月23日、イギリスが生んだ名優サー・ロジャー・ムーアが亡くなった。

ムーアといえばやはり007ことジェームズ・ボンドのイメージが強い人もいるのではないだろうか。

ロジャー・ムーアの作り上げたボンドはそれまでのショーン・コネリーのボンド像からくるワイルドでどこか荒っぽいイメージとは違う、どこかユーモアを感じさせるものだったように思う。

このユーモアさからか、彼の出演した007シリーズは他のシリーズに比べるとやはりユーモアが優先されており、スパイの非常な部分よりもエンターテイメント性の高い作品へと仕上がっていた。

これは彼自身の人間性から来る面もあり、クイーンズイングリッシュを話す上品で人に好かれる要素が多かったそうだ。

誰からも好かれ、気品ある男としてのロジャー・ムーア、そのイメージを役に投影した見事な007シリーズは観客の評判も良く、シリーズとしては最多の出演数を誇る俳優として記憶に刻まれている。

晩年は体調を崩すことも多く、舞台出演中に倒れたり、式典への出演時に屈んだまま起き上がることが出来なかったりなど肉体の衰えがニュースに度々上がってはいたのだが、惜しくも89歳でこの世を去ったことが非常に悔やまれる存在なのだ。

親交も深く、同じボンド俳優でもあったショーン・コネリーは俳優業を引退こそしてはいるがまだまだ健在。

元気な姿をまた、見せてくれることを願うばかりである。

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さて、ロジャー・ムーアのボンドといえばユーモアだと先程も書いたのだが、ムーア版ボンドの最大の特徴といえば相手を殺すことへの軽い感覚であろう。

それまでのボンドでも敵を倒す際などにニヒルなジョークを付け加えることはあったのだが、ムーア版はこれに輪をかけてジョークを飛ばすことが多い。

この相手を殺す際のジョークはスパイ映画のシリアスな面を徹底的に配し、完璧なエンターテイメントとして人の死でさえジョークに変えてしまう映画としての方向性、原作からの完全な解離を現したものだった。

このユーモアセンスは後年のあらゆるアクション映画にも引き継がれていき、敵を倒すシーンを1つのギャグへと変わていった。

特にその要素が強くなったのは80~90年代ハリウッドアクション映画黄金期のように思う。

アーノルド・シュワルツネッガーを始めとしたアクション俳優たちは敵を倒すことに対してシリアスな面をほとんど排除した。

この要素は007シリーズでもピアース・ブロスナン世代で多用され、不謹慎ジョーク、面白いガジェトなどの子供心を思い出させるエンターテイメントとしてのスパイ映画がつくられていったのだ。

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しかし、時代は変わり2000年代。

世界は未曾有のテロや戦争の時代へと突入し、人の死がジョークとして通用しなくなっていった。

007シリーズはダニエル・クレイグに世代交代し、遊びではないスパイの非常な世界を描いた作風へと転換していったのだ。

シリアスでユーモアがあまりない作品たちが数を増やしていく中、当時はガイ・リッチー映画のプロデューサーなどをしていたマシュー・ヴォーンは何か物足りないものを感じていたのだろう。

彼はかつてのユーモアがいっぱいでエンターテイメント性の高いアクション映画をつくりたいと渇望し、「キックアス」の制作へと取り掛かった。

しかし、「キックアス」の過激なバイオレンスシーンや少女のキャラクター像などに難色を示した配給会社は彼の作品への出資を拒否。

それでも諦めがつかない彼は自費で賄い何とか作品を作り上げる。

その後のことは知ってのとおり、観客たちは近年にないジャンルのアクション映画に興奮し、マシュー・ヴォーンの名を世界的に瞬く間に広めていったのだ。

地位と名声を手にしたマシュー・ヴォーンはかつてロジャー・ムーアが作り上げたボンド映画を彷彿とさせる作品の制作に着手。

それが「キングスマン」だ。

 

ダニエル・クレイグに変わってからの007はピアース・ブロスナン世代とはガラリとイメージを変えシリアスでダークなスパイアクションとなっていた。

もちろん、こちらの路線も作品としては面白かったのだが、やはりロジャー・ムーアピアース・ブロスナン世代のユーモアとガジェト溢れる大人のおもちゃ箱であるスパイ映画を忘れられないマシュー・ヴォーンはこれらのスパイ映画へのオマージュを捧げる形で「キングスマン」を制作。

秘密ガジェトやユーモアあるバイオレンスアクションなど「キックアス」の時にも取り入れた遊び心満載のスパイ映画は監督と心を同じとした観客を始めとした多くの人々を魅了。

殺人やバイオレンスに対して過剰に反応していた映画界に、かつての遊び心をとりもどしたのである。

しかし、この映画にはもうひとつ大きなテーマがある。

それは、立派な人間には誰だってなれるということだ。

サー・ロジャー・ムーアは生前時、人格的にも素晴らしかったという。

温厚で明るく、誰にでも好かれ、センスのいいジョークを飛ばした。

サー・ロジャー・ムーアは決して貴族の出というわけではない。

サーの称号は彼の俳優としての功績、そして立派な人としての振る舞いから授かったものなのだ。

マシュー・ヴォーンはそんなサー・ロジャー・ムーアへの敬意ともとれるテーマをこの「キングスマン」へ盛り込んだように感じる。

私はサー・ロジャー・ムーアの存在があったからこそ、「キングスマン」が面白く、そして深いテーマを造り出すことができたのではないかと思っている。

サー・ロジャー・ムーア亡き今、彼の意思を受け継ぐ紳士たちが新たな時代を切り開くことを期待すると共に、我々1人1人が彼のような紳士を目指し、日々精進していくべきなのではないだろうかと思う。

そう、「マナーが人をつくるのだ。」

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